一瞬の感動はこうして作られる

■一つの舞台がどのようにして出来上がって行くのかというところに興味があります。

 

いろんなケースがありますが、竹三郎の会と合わせてお話しできればと思います。

 

先ほどにもありましたがまず演目が決まります。

それからオファーをして出演していただく役者さんが出揃って…それから宣伝をしていくわけで。

 

普通は業者さんに頼みますけど、今回はチラシも自分で一から作りました。

 

「竹登会(たけとかい)」とかでチラシの雛形みたいなのを作ったりだとか、数年前の東山村流の舞踊会でパンフレットやチラシを作ったりとかしてたんですよ。

今プリントパックとかあるでしょ(笑)ああいうので簡単にできるので。

作るのは好きなほうですね。

 

 

■今回のチラシを拝見しても確かに初めてのクオリティじゃないですもんね(笑)

 

 

そういうことが好きな人とかが教えてくれたりして(笑)

 

これはこんぴら歌舞伎の時から話がはじまって、6月くらいにチラシは作りはじめたんです。

それでいろいろお芝居とか観に行って、そしたらチラシとかもらうじゃないですか。

それを参考にして。

 

あと、演目が2つってのが難しいですね。

例えばワンピースだったら海賊の絵を載せるとか。

 

今回は自分の会だけど、芝居に対して何か連想させるものを載せないとと思いました。

“しぐれ”と“雷”だから雨のイメージだとかいろいろ探して。

 

最初は日本画を使おうと思ったんですよ。

福田平八郎(ふくだへいはちろう)の「雨」っていう作品で、屋根にポツポツと雨が落ちてる絵。

これはちょっと洒落てて面白いんじゃないかって思ったんです。

だけど、年齢の高い方からはちょっとペケでね(笑)

「墓石みたい」だとか「こんなんじゃお客さんこない」とかね(笑)

 

 

■厳しいですね(笑)

 

 

若い年代の人だと「ちょっと変わってて面白い」とかいう声もあったんですけど。

それでまた探して、今度は屋根瓦に雨が降ってる写真があったんですよ。

よしこれでいこうと思ったら、これもペケで(笑)

 

「歌しぐれ」の役はずっと頭巾をかぶってるんですよ。

扮装写真とかは撮らないから…うーんと考えて、結局こんなふうになったんですけど。

 

浮世絵を使うのはなんだかありきたりかなと思ってイヤだったんですけど、おかげさまで評判が良くて。

 

 

■インパクトがあって好きです。

 他のチラシがあったとしても、パッと目に入る。

 

 

そう言っていただけたらもう救われます(笑)

 

そうやってチラシが出来ていって、あと他の印刷物も今回ぜんぶ自分で作ります。

チケットも劇場によっては印刷しくれるところもあるんですけど、今回の劇場はそれがないので。

あとはパンフレットもですね。

 

今になったらね、やめときゃよかったなって思いますけど(笑)

忙しくなってきて、しまったっと思ってます(笑)

でもこういう自主公演とかを手伝ってる人とかからは「そこまでやる人はいないからそういうこともやったほうが良い」と言われて。

 

まぁ1回目はね(笑)

 

 

それで印刷して初めてわかることってあるじゃないですか。

PCで見てたらわかんないこととか、紙にして気づくとか。

 

人の名前間違ってたりね(笑)漢字が間違えていて…とかね。

 

 

■あ~…(笑)たった一文字でも間違ってたらやり直さないといけないですもんね。

 

 

そうそう。

だから大変ではあるけどこういうことも知らなかったら「チラシ作るだけでなんでそんな時間かかってんの?」って思いますけど、やっぱり人の気持ちがわかるようになるというところがね。

 

やってみないとわかりませんし(笑)

 

 

 

 

 

■印刷物もそうしてご自分で作って、あとは台本もですよね。

 

先ほども少し出ましたけど大谷図書館ってところにまた行って、そこで台本を見せてもらって複写してもらったんですけど。

昔はパソコンもないですからぜんぶ手書きなんですよ。

そしたら上演するたびにちょっとずつ違ってくるわけです。書き直したりしてあったりとか。

東京に一冊あって、大阪の松竹座の上に関西演劇室というのががあってそこに古い台本があってそれも複写させてもらいました。

それを照らし合わせて。

■大変な作業ですね。

 これは気が遠くなりますでしょ。

 

 

またこの旧仮名遣いだったりとかで字が読みづらいんですよ(笑)

コピーだから薄くなるところもあるし。

 

そんな感じで照らし合わせて混ぜていきました。

 

調べているうちに「歌しぐれ」は昭和13年1月に「芦分鶴(あしわけづる)」という題名で上演されていることもわかったのでそれも取り寄せて、さらに混ぜて作りました。

これも去年5月くらいからぼちぼち始めました。

 

竹三郎の会の時は、猿之助さんところの本を書く石川耕士(いしかわこうじ)さんって方がいらっしゃって、「女団七」はその方にお願いしました。

 

「四谷怪談」は狂言作者の方に色々ブレンドして作っていただいたんです。

 

 

本来は然るべき人にお願いするべきことだと思います。

まぁでもこれもやってみたらということで。

 

 

■台本はどのくらいで出来上がりましたか?

 

 

一つにまとめたのがが1ヶ月くらい、

そこから読み込んで…増やしたり、削ったり、言いまわし変えたりして出来ていきました。

作者さんの癖というか「風」がありますから郷田さんの他の作品も読んで…。

 

■チラシやパンフレットまではなんとなくわかりますが、台本まで作るってなかなか(笑)

 

 

今はコピー機で印刷してクリップでとめたらそれで台本になるんですけど、これは自分の贅沢でちゃんと製本したいなと思いまして(笑)

 

これが台本です。

■すごい!貴重です!!

 

 

これは本当に自分の贅沢です。

でもやっぱり字が間違ってたりとかね、色々あります。

それを自分で見つけたらまだいいんですけど人に見つけられたら、もう(笑)

 

 

■私、台本って初めて見せていただきました!

 

 

そうですか。

やっぱりこれが出来上がった時はちょっと気持ちも引き締まりましたね。

 

 

■こうして台本が出来上がったわけですね。

 

 

あとは舞台に関してはスタッフの方にお願いして発注していきます。

音響、照明、狂言方、大道具、小道具とか決まっていって、打ち合わせもします。

 

竹三郎の会の時は下座がありましたので、演奏家の人をお願いして人数揃えてもらって、稽古のスケジュールをとる。

これが大変なんです。

 

だから舞台に出ている人以外の数ってすごいんですよ。

■裏方さんの方が多いってことですよね。

 

 

そうです。

大阪なんで東京からいらっしゃる方はホテル取らなきゃいけないとかね(笑)

 

 

■やることありすぎですね。

 

 

パンクしそうですけど(笑)

 

竹三郎の会の時は、下座の打ち合わせが大変でした。

特に「女団七」はないものだったので。

大谷図書館に付帳(つけちょう)ってのがあるんですよ。

このきっかけでこの音楽を附けましたってことが書いてある帳面。

国立劇場の裏の図書館にも昔の付帳があって、合計3種類くらい出てきて、それを持って担当していただいたの三味線の方のところに行きます。

やっぱり3種類とも違うんですよね。

きっかけだったり、使うものと好みもあるし。

 

三味線の調弦って「二上り(にあがり)」「三下り(さんさがり)」「本調子(ほんちょうし)」って3つあるんです。

その時に言われたのが、こちらがこの曲でってお願いしても調弦がバラバラでそれぞれ違うと三味線の人って困るんですって。

調弦直す時間があればいいけど、すぐには出来ないと。

そういうこともやっぱり聞いてみないとわからなかったし、なのでこれは非常に良い勉強になりましたね。

お芝居に対してどうやって音楽を作っていくのかというところ。

竹三郎の会を手伝わなかったらわからなかったでしょうし。

鳴物なんかは楽器も借りなきゃいけないし。

 

 

■お話をうかがうだけでも大変なことだなと。

 本当に真っさらな白紙の状態からスタートってことですもんね。

 

 

お芝居作るって本当大変なことですね。

だから普段漠然と観ている芝居でも、“見えないもの”って本当にたくさんあるんだなと思いましたね。

 

自分の会は音楽は録音でやるのでこの作業はありません。

 

傘寿の時は2日間だからこそ出来る緊張感、これを翌年明治座で1ヶ月長いスパンでやる難しさ、

演奏される方も変わったら感じも変わってくるし。

なので「女団七」という演目を、2日間の自主公演と翌年本公演でできたからこそ見れたことですよね。

 

 

 

■そしたら手配したりだとかそういったことはもう現時点では出来てきたということでしょうか。

 

 

だいたいそうですね。

大道具の道具帳なんかは来週くらいに出来ます。

 

これがね、道具帳っていうんですよ。

竹三郎の会(傘寿)の時のものですけど。

■わ!すごい!!めちゃくちゃ貴重ですね。

 

 

そうですね。

縮尺で書かれてます。

まずそれを描いてもらって、ここから出入りができるとか、ここにこれがあるとかそういう部分。

これが出来てくると、今度はどこに小道具を置くとか決めていく。

 

 

■大きいところから決まっていくんですね。

 大道具の背景の絵とか見ているともう芸術ですよね。

 

 

そうですね。

これが出来て、この色はもう少しこうしてとか出てくるし。

 

 

 

■すごい!なかなかこれは普段見れないものですね。

「女団七」も写真が残ってたんですよ。

 

「演劇界」ってあるでしょ。あれのもっと古いやつで「演藝画報」ってのがあったんです。

芝居を観たままの速記で動きはああやってこうやってというのが全部書いてあるんですよ。

 

「女団七」の時はそれで昔の人はこうやってたとかわかったんです。

 

 

■全部に振り仮名がふってありますね(笑)

 

 

そうそう。それでも読めないでしょ(笑)

 

 

■こういった昔の資料とかをもとにして大道具だったりを準備するんですね。

 

 

そうですね。衣装とかも参考にしてね。

今度の「歌しぐれ」もこんなふうな写真とかね。

■へぇー!よく残ってますね。

 

 

東京の歌舞伎座で上演されたから大きい写真が残ってたんですよ。

これが大阪だったら残ってなかったかもしれないです。

 

 

■これを参考にして大道具とか衣装とかを準備なさってるんですね。

 写真は白黒だから、色とかは想像したりして?

 

「歌しぐれ」の衣装は師匠と見にいって、柄とかは写真を参考にしたりしました。

色は好みもあるし。

 

まぁ参考にしつつ、ほぼ新しくという感じですかね。

 

 

■珍しい演目を1から作るとなるとアレンジできたりもしますよね。

 

 

自分の考えでやっていこうと思えばできるし、でもお芝居の持っているニュアンスを感じないといけない。

そこの比率の難しさはありますね。

なので、師匠がいると「いや、違う。こっちや」と。(笑)

安心です。

 

 

■自分一人で何かをやる時は脱線することがありますよね。

 こう一直線になりすぎて(笑)

 

 

そうそう(笑)

だからそういうのは止めてくれますね。

 

だいたいそんな感じで準備していって、チケットも売り出して、

あとはお稽古ですよね。

 

 

■もう時間も限られてますよね。

 

 

そうですね。

自分だけじゃないですしね、伝達事項もありますし。

 

 

■確かに、“間(ま)”とかもありますしね。

 本公演だって今こうしてお仕事されてらっしゃる中でこれだけのことをするって大変ですね。

 

 

だから帰ったらもう何にもしたくなくなる(笑)

 

 

■そうですよね(笑)

いや、昨日のワンピース歌舞伎を拝見していて、走り回ってる竹之助さんを見て「これ毎日爆睡だろうな」と(笑)

そうした中で自主公演の準備をされていて体力もですが、精神的にも…。

そうですね(笑)

一日一日を大事にしなきゃいけないなと思うんですけど。

 

 

■気の休まる時がないんじゃないですか?

 常に何か考えてますでしょ?

 

 

うん、そうですね。

常にそういったやりとりしてますね。

 

 

■お稽古は一度でも全員で集まったんですか?

 

いや、まだです。

7月の末からです。

 

 

■そうなんですね。今は個々で台本覚えたりとか?

 

 

そうです。

台本渡して、これを一所懸命読んでくれてる人もいるでしょうし

まだ置いたままの人もいるでしょうし(笑)

 

 

■なるほど(笑)

 歌舞伎の稽古って確かに本公演でも数日だけしか合わせないってよく聞きますね。

 

 

3~4日間くらいですね。

 

 

■それであんなにピシッと揃うってすごいなといつも思います。

 

 

古典だともうパターンが決まってますからね。

パターンである程度、骨組こしらえてという感じですから。

それで経験者の方がいたら伺ったりして。

 

 

早く落ち着いてお芝居に集中できればいいんですけど(笑)

なかなか、自主公演やる方は無理って言ってました。

もうバタバタしてね。

 

勉強会等をやってて「さぁ舞台出よう」って時に「すいません、お弁当2つ足りません」って言われたりだとか(笑)

 

 

■「今!?」みたいな。(笑笑)

 もうでも本当になんでもしなきゃいけないということなんですね(笑)

 

 

そうそう(笑)

だからある程度任せられる方もいてほしいですよね。

でも勝手にやられても困るし、それを自分が把握してなかったら「なんで知らないんですか」言われても困るし。

 

だから真ん中に立つ人って“知ってて知らないふり”ってのがあると思うんです。

© 2017 Tomoko Shimokawa