三代目坂東竹之助さんってどんな人??
■竹之助さんの目指す役者像はありますか?
師匠のようになりたいというのはあります。
星が浜の場面で一言セリフを言いますよね。
「心の病に効くなによりの薬は、人の心の優しさでございます」って。
ああいう言葉をきちっと言える役者になりたいです。
あの言葉を伝えるにはいろんなことを経験してないといけないだろうなと思います。
お稽古の時に代役で立ったこともあったんですけどやっぱり違ったんですよね。当たり前ですけど。
あの言葉が生きているから“仲間がいるよ”となって盛り上がっていける気がします。
お芝居って気持ちのものだから、言い換えたら“人の心にきくのはお芝居”かなと思うんです。
■同じセリフでも役者さんによって違いますよね。
感じ方も違いますし、「この人の言い方好きだな」とかありますもんね。
あと今回のお芝居で勉強になったのは、“楽しんで帰ってもらう”ということ。
これは単純なことだけどすごく良いことだし、これを古典に持っていこうと思ったらすごく大変なことだと思います。
■ネットで舞台の感想を書いてあるのを見ていて、
「ある方が演じた時にはそこで戯けてドッと笑いをとったんだけど、別の方が同じ場面を演じた時にはそこをリアルに演じて笑いはおきなかった」と。
なんかこれって結構面白いなと思って。
戯けて笑いを誘って、それでお客さんも笑って楽しいというのは当たり前だけど、その感想を書いた人はリアルに演じて笑いがおきなかった時のほうが面白かったと書いてあったんです。
“良かった”と思ってもらえたらですね。
今度の自主公演も、観終わって街へ出たときに「あ~良かったな」と思ってもらえる。
そんな芝居ができる役者になりたいですね。
役は何がきたってそれをこなしていかなきゃいけない。
やりたい役もありますけどね、
でもやりたい役をやってみて良かったという人はあんまりいないらしいです(笑)
■自分がやりたいのと、人から見て「この人はこれが合うだろう」というのは違うんですね。
そうみたいです(笑)
■自分がやりたいものってやはり自己満足になるんですかね。
やっぱりそこで終わるんじゃないですか。
こうしようああしようとかいうのがちょっとなくなるのかもしれないですね。
けど師匠がやってる役みるとやってみたいなと思ったりします。
■竹三郎さんの芸を受け継いでいくというお気持ちも。
それはどれだけできるかわかりませんけど。
でも観てもらったときに、「やっぱり竹三郎さんとこのお弟子さんやな」と思ってもらえれば。
顔も違うし、全て違いますけど「似てるね」と言われると嬉しいです。
これはお弟子さんはみんなそうだと思います。
師匠はイヤでしょうけどね(笑)
■坂東竹朗時代のインタビュー記事を拝読いたしました。
竹之助さんが歌舞伎好きになったのはお母様の影響だそうですね。
そうなんですよ。
けど、母は10年くらい前に亡くなりました。
■そうでしたか…。
けどね、いなくなったからこそ今日があるのかなと思います。
やっぱり親がいるって楽ですからね。
いなくなって、なんでも自分でしなきゃいけなくなりましたから。
生きてたら、どうでしょうね。
褒めるか…うるさい人でしたからね(笑)
■10年前ということはまだそんなにご活躍は…
そうです。まだそんなに舞台出てなかったです。
■歌舞伎役者になったときにはまだご健在でしたか。
いました。
やっぱり特殊な職業やから色々心配かけていたみたいです。
「やめてしまえ!」とか言われたこともありましたし(笑)
けどね、着物の色のセンスとか凄く良かった。
そういうのはもうちょっと聞いておけば良かったと今になって思います。
■若いときにはよくお母様と歌舞伎を観にいかれましたか。
そうですね。母方の親戚がわりあい好きだったんで。
なので母方の親戚は喜んでくれてますね。祖父が好きやったらしいんですよ。
■まさか自分の家系から歌舞伎役者が…!って(笑)
言われますね(笑)
不思議なもんですよね。
■お母様も生きてらっしゃったら喜んであったでしょうね。
ご兄弟はいらっしゃいますか。
5つ上の姉がいます。
松竹座のワンピースは観に来てくれて、喜んでくれてましたけどね。
■そうですか。もともと歌舞伎は?
姉は嫌い(笑)
すぐ寝る(笑)
■えー(笑)
ワンピースだから観に来てくれたんだと思います。