かみかけてさんごたいせつ

盟三五大切

通称…三五大切

初演…文政8年(1825)

作者…四代目鶴屋南北

 

主な登場人物

・薩摩源五兵衛 実は 不破数右衛門

(さつまげんごべえ じつは ふわかずえもん)

・笹野屋三五郎

(ささのやさんごろう)

 船頭。小万の夫。

 実は了心(徳右衛門)の倅・千太郎。

 了心から金の工面を頼まれ、女房である小万を芸者に。

 

・妲妃の小万

(だっきのこまん)

「妲妃」の異名を持つ深川の凄腕芸者。

 実は三五郎の女房・お六である。

 夫が大金を必要としているため芸者となっている。

 

・了心

(りょうしん)

 三五郎の父。

 出家する前は徳右衛門という名前で不破数右衛門(源五兵衛)に仕えていた。

 

この作品は鶴屋南北が71歳の時の作品です。

 

「五大力物」(ごだいりきもの)の一つ。

 

 

 

 

「仮名手本忠臣蔵」を背景とした「東海道四谷怪談」が大ヒットした江戸中村座。本作はその続編として上演されました。

 

しかし、初演後ヒットにはならず、上演が途絶えていました。

 

昭和51年8月(136年ぶり)に

国立劇場小劇場にて復活上演し、

その後、南北の名作の一つとして近年では度々上演されています。

 

 

 

大坂曽根崎新地での“五人斬り事件”を素材とした初代・並木五瓶の「五大力恋緘(ごだいりきこいのふうじめ)」を取り入れた作品です。

 

 

 

「五大力(ごだいりき)」とは「五大力菩薩(ごだいりきぼさつ)」のことで、心願成就のご利益があることから江戸時代にとても人気がありました。

 

 

そうしたことから、女性たちが恋文を送る際に、無事に相手に届くとようにと封じ目に「五大力」と書いていたようです。

 

 

この演目の中では、小万が源五兵衛のことを一途に想う愛の証として腕に「五大力」と彫っています。

しかしこれが源五兵衛にむけたものではなく、三五郎の名前をもじって「三五大切」となっていることに気付いた源五兵衛はさらに怒りが増し、殺しの場面ではすごく惨い殺され方をします。

 

 

ストーリーは、なにも知らないまま観ても筋はわかりやすいので、確かに理解はできますが

知らないまま観ていて最後の最後で急に忠臣蔵の世界観が広がると「あれ?なんで急に忠臣蔵?」となりますので少し

予習をしてから観劇することをお勧めします。

 

 

大まかな内容と致しましては、

①三五郎の父・了心は旧主のために大金を必要としていて、

勘当した倅・三五郎に金の工面を頼んでいます。

 

②父・了心から勘当を解いてもらおうと大金を必要としてる三五郎。

そのため芸者となった小万。

 

③2人は源五兵衛から100両を騙しとります。

 

④騙されたことに気付いた源五兵衛は怒り心頭。次々と殺します。

 

⑤小万も赤子も殺される。

 

 

⑥三五郎が父に渡すために源五兵衛からだまし取った100両。

そのお金は実は父が旧主である源五兵衛に渡す金であったということに気づきます。

つまりは源五兵衛に渡すための100両を源五兵衛から騙し取ったというわけです。

これを知った三五郎は切腹します。

 

 

⑦源五兵衛は不破数右衛門として仇討ちへ

 

 

 

…というお話です。

 

 

 

 

 

ではもう少し詳しく…

 

 

塩谷家の家来である不破数右衛門(ふわかずえもん)は、

盗賊に御用金百両を盗まれ浪人となり、薩摩源五兵衛(さつまげんごべえ)と名を変えています。

 

 

伯父が軍資金にと貸してくれた金を

深川の芸者・小万(こまん)と三五郎にだまし取られます。

 

 

 

 

騙されたことに気付いた源五兵衛は

小万と三五郎を殺そうとするも、罪のない五人を次々と斬ってしまった。

 

 

五人を次々に惨殺する源五兵衛ですが、根っからの悪役ではないというところがこの役の見どころの一つであり、

「あんなに人の良い源五兵衛だったのに、人の人生ってこうも変わってしまうものなのか」と考えさせられるところであります。

 

 

そして、小万と三五郎は腰を抜かしながらもなんとかそこから逃げのびます。

 

 

 

源五兵衛から逃れるため、四谷鬼横町に引越した三五郎と小万。

偶然にも家主が小万の兄でした。

 

お岩稲荷勧進の僧了心となった三五郎の父がやってきます。

三五郎は手に入れた100両を渡します。

 

父・了心が去ったあと、源五兵衛がやってきますが、

ここで斬るわけでもなく、酒をおいて帰っていきました。

 

 

小万の兄がその酒を飲むと苦しみ倒れます。

源五兵衛が持参したその酒には毒が入っていたのです。

 

 

三五郎は樽に隠れ、父・了心の寺へ…。

 

 

 

小万の元へ再び訪れた三五郎は、小万の腕の彫りものが「三五大切」となっていることに怒り心頭。

 

 

小万に刀を握らせ、赤児を自らの手で殺させ、

ついには小万も首を落とされます。

 

 

とてもリアルな殺しの場面はとても見応えがあります。

 

 

切り落とした小万の首を懐に抱き、雨の中、源五兵衛は去っていきます。

このときの源五兵衛の表情はなんとも言えません。

 

 

この殺しの場面から、

雨の中、小万の生首を大切そうに、悲しそうに、憎らしそうに、愛おしそうに…複雑な心境で抱く源五兵衛の姿。

特に凄い仕掛けなどがあるわけではないのですが、

まるで映画のようになにかスケールの大きなものを観ているような印象を受けました。

 

 

 

愛染院の庵室に帰って来た源五兵衛。

小万の首を見ながら食事をします。

この時の小万の首が本首(ほんくび)と言って、小万役の役者が自分の首を生首のように出し、

源五兵衛がその首にご飯を食べさせようとしたら目と口をパッと開けるので客席はちょっとビックリ(笑)という演出がありますよ。

 

 

源五兵衛は仇討ちには加わることはできないと了心にうちあけ自害しようとします。

 

 

その時、樽の中から、切腹した三五郎が出てきました。

 

 

三五郎は源五兵衛からだまし取って父・了心に渡した100両は

実は父・了心が源五兵衛(旧主・不破数右衛門)に渡すための金だったのかと悟り切腹したのです。

 

 

そして雪が舞う中、

源五兵衛は不破数右衛門として仇討ちへ加わるのでした。

 

 

私の好きな演目の一つです。

© 2017 Tomoko Shimokawa