
歌舞伎辞典
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「歌舞伎」と聞くと思い浮かべるのはあの独特なお化粧。
顔の血管をオーバーに表現するために、
赤や青、茶色などで筋をひいたものが「隈取(くまどり)」と呼ばれる歌舞伎ならではの化粧法です。
江戸時代から続く化粧法であり、浮世絵にも多く残されています。
歌舞伎初心者さんにとっては
「歌舞伎ってやっぱり難しい」と感じてらっしゃる方もいるかもしれません。
江戸時代から続く演劇だから現代人の私たちにとって理解しにくいこともあります。
そういった意味で確かに「古典は難しい」です。
でも、ポイントをおさえれば
一目でその人物がどのような役柄であるかがわかります。
衣装や鬘、小道具、セリフなど様々な表現方法で、わかりやすい工夫をしています。
その一つが隈取です。
顔をみれば善人か悪人か、化物なのか、、などその役柄が一目でわかるから面白い。
しかし、
歌舞伎だからって
みんながみんな隈取をしているわけじゃないですよ。
隈取は『荒事(あらごと)』で観ることができる
歌舞伎には
「和事(わごと)」と「荒事(あらごと)」
と呼ばれる演出があります。

「和事(わごと)」は上方で発展していったもので、
やわらかい表現が特徴的です。
初代坂田藤十郎が作り出したと言われています。
元々は身分の高い主人公が何らかの理由で落ちぶれていったり、
遊女との痴話喧嘩など、男女のやりとりを描いたもの。
こちらには隈取は用いません。
参考:東京都立中央図書館加賀文庫所蔵「鋸くず」

参考:国立劇場所蔵「市川團十郎の代々」
「荒事(あらごと)」は江戸で発展していったもので、荒々しく力強い表現が特徴的です。
初代市川團十郎が作り出したと言われています。
化粧も衣装も見得(みえ)という独特なポーズの取り方も、とにかく全てが派手で大げさです。
力強い主人公が悪者をやっつけるという筋で、江戸時代の人にとってはヒーローショーのような感じですね。
現代でもそれぞれの地域で文化が違うように、
昔も江戸と上方では文化も違い、好まれる演出も違ったのでしょう。
また、現代のようにネットなんて当然ない時代ですから、尚さら独特な文化がそれぞれに発展していったのだと思います。
さて、
荒事で見ることができる隈取。
役によって様々な隈取がありますが、大きく分けると3種類です。
①赤 = 紅隈(べにぐま)
②青 = 藍隈(あいぐま)
③茶色 = 代赭隈(たいしゃぐま)
この“色” でその役がどのような人物であるかがわかります。
①赤色は紅隈(べにぐま)
若さ、勇気、強さ、正義などを表しています。

②青色は藍隈(あいぐま)と言います
悪人や怨霊であることを表しています。

③茶色は代赭隈(たいしゃぐま)
妖怪や鬼など人間以外の役に用います。

隈取は血管や筋肉を大げさに強調したものです。
筋が多くてはっきりとしたものであればあるほど感情がむき出しになってる状態であると思って良いと思います。
そのほか歌舞伎の化粧いろいろ
