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歌舞伎の音楽
長唄から黒御簾音楽まで幅広くわかりやすくまとめたいと思います。
 

歌舞伎の音楽は

一部の新作歌舞伎を除き、ほぼ全ての演目で生演奏されます。

舞台の正面、上手(右側)、下手(左側)にて客席から見える形で演奏されますが、

例えば雨の音、波の音などの効果音や芝居のBGMは舞台下手にある黒御簾(くろみす)と言われる場所で舞台の進行状況に合わせて音を出します。

また、幕開きや幕切れに聞こえる柝(き)の音、

見得(みえ)や足音などを強調する時に上手で音を出すツケと呼ばれるもの。

 

ここでは歌舞伎には欠かせない音楽についてまとめていきたいと思います。

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長唄(ながうた)

三味線や大鼓、小鼓、笛にのせて唄う「唄いもの」で、囃子と一緒に演奏するのが特徴です。

 

三味線には細棹(ほそざお)、中棹(ちゅうざお)、太棹(ふとざお)と種類がありますが、長唄では細棹を使います。

棹や糸も細く、高い音が出ます。

 

舞台正面の雛壇にずらりとならんで客席から見える場所で演奏するのを「出囃子(でばやし)」と言います。

舞台下手にある黒御簾(くろみす)と呼ばれる場所で演奏することもあります。

その場合は客席からは見えないので「陰囃子(かげばやし)」といい、これは後ほど紹介する「黒御簾音楽(くろみすおんがく)」に含まれます。

 

長唄で有名なものは「勧進帳」「棒しばり」「春興鏡獅子」「娘道成寺」…など。

 

【見た目で判断するポイント】

見台はイラストのように脚が交差したシンプルなものです。素材は桐だそうです。

関連ページ 

聴いてみよう!長唄三味線の世界 柏要二郎さん

▼このように舞台正面の雛壇にずらりとならんで客席から見える場所で演奏するのを「出囃子(でばやし)」と言います。

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ぎだゆう(じょうるり)=たけもと

義太夫(浄瑠璃)=竹本

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義太夫節は歌舞伎では「竹本(たけもと)」ともいいます。

 

語りの太夫(たゆう)と三味線の伴奏とともに2人1組で演奏することが多い。

 

長唄で説明したように三味線には種類がありますが、義太夫では太棹(ふとざお)を使います。

低音で重みのある音色が特徴です。

台詞以外にも心情や情景も語ります。(わかりやすくいえばナレーションのような役割)

舞台上手で演奏することが多い。

 

歌舞伎の三代名作と言われる「仮名手本忠臣蔵」「菅原伝授手習鑑」「義経千本桜」は義太夫狂言です。

(義太夫狂言とは、もともと人形浄瑠璃のために書かれた作品を歌舞伎化したもの。)

 

 

【見た目で判断するポイント】

見台はイラストのように黒色で房が二つ垂れ下がっている。

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常磐津(ときわづ)

三味線を伴奏とした浄瑠璃の一つで、高くゆったりとした明るい語り口。

 

三味線は中棹(ちゅうざお)を使います。

舞台下手で演奏することが多い。

 

常磐津舞踊の大曲と言われる「関の扉(せきのと)」、「将門(まさかど)」などが有名。

 

【見た目で判断するポイント】

見台はイラストのように朱塗りの蛸足(たこあし)のものを使うことが多いです。(黒色の見台を使うこともある)

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清元(きよもと)

三味線を伴奏とした浄瑠璃の一つ。

舞踊の伴奏として演奏されることが多い。

語りを担当する太夫(たゆう)と三味線方(しゃみせんかた)で演奏します。

三味線は中棹(ちゅうざお)を使います。

 

高い音域で細やかな節回しが特徴。

 

「三社祭」「かさね」「保名」「隅田川」など。

 

【見た目で判断するポイント】

見台はイラストのように台箱に一本脚、黒色。

黒御簾音楽(くろみすおんがく)

下座音楽(げざおんがく)

​陰囃子(かげばやし)

舞台下手(しもて=左側)に簾がかかった場所があります。

この中で演奏する音楽を「黒御簾音楽(くろみすおんがく)」と言います。

客席から見えない場所で演奏するので「陰囃子(かげばやし)」とも言います。

また、この場所を下座(げざ)ともいいますので「下座音楽(げざおんがく)」と呼ばれることもあります。

 

三味線や鳴物(なりもの=大鼓、小鼓、笛など三味線以外の楽器のこと)、唄などで芝居のBGMを演奏したり、下記で紹介するような雨や波の音といった効果音まで黒御簾の中で生演奏します。

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▼例えば​こんなの

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波ざる(なみざる)

 

小豆を入れたザルを揺らして波の音を出します。

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雨団扇(あまうちわ)

 

ビーズを縫い付けた団扇を揺らして雨の音を出します。(昔はビーズではなく大豆だったそうです)

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カエルの鳴き声

赤貝のギザギザのほうをこすりあわせて音を出します。

他にも聞こえるあの音なぁに?

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柝(き)

一般的に拍子木と言いますが歌舞伎では柝(き)といいます。

2本の木を打ち鳴らします。

 

準備が整い幕が開く時、舞台が廻る際のきっかけとして打たれたり、幕切れで役者さんの見得(※1)などがきまった時、幕が閉まる時など

舞台を進行するためになくてはならない存在です。

狂言作者(きょうげんさくしゃ)と呼ばれる人がその演目の幕開きから幕切れまで担当します。

客席から見えない場所で打ちます。

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ツケ

見得(※1)や足音、物が落ちる時などの演技を強調する際に、「ツケ」と呼ばれるものを打ちます。

イラストのようにツケ木を持って床に置いているツケ板に打ちます。

一見シンプルですが、ツケ木とツケ板のみで様々な音を表現していることに驚きます。

 

役者さんの演技に合わせて「バタバタ…」「バッタリ!」と打ちます。

必要な時にのみ上手(かみて=舞台右側)に登場します。

 

 

※1 )歌舞伎の独特なポーズの取り方で見得(みえ)と呼ばれるものがあります。

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